身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 実家は両家ともすっかりそのつもりで再会の席を設けていたし、琴音自身、閑にも了承は伝えていたが、改めて実家に電話連絡もいれておく。
 本当は回避できないこともない、と言われたけれど、自分も前向きに進んでいきたい、と電話に出た父親にそう言ったのだが。ここで、思わぬ厳しい声を聞いてしまった。

『何を言ってる、そんなのは閑くんが気を使ってくれただけだ。こっちには拒否権は無い』
 厳しい声でそう言われた。
「え? でも、閑さんが……」
『昔から決まっていたことだし、婚姻関係を結ぶ約束で継続されている仕事がある。それに……』

 通話口の向こうで、父親は言い辛そうに一度言葉を止める。いつも尊大だった父親が、小さな掠れるような声で続けて言った。

『二宮に専属で卸している精密機器の部品の一部は、他社でも製造が可能になってきている。長い付き合いだからということと祖父同士の約束だけで染谷を選んでくれているようなものだ』

 自分が閑と結婚できるかどうか、そういうふわふわとした感情だけで悩んでいた頭が、急速に冷えた。

< 27 / 239 >

この作品をシェア

pagetop