身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「あち」
箸ですくった雑炊が唇に触れたとき、少しだけ熱く感じて軽く息を吹きかける。けれど口の中に入れると、ちょうどよい熱さだった。
――あ、美味しい。
優しい味が口の中にひろがり、飲み込めば身体の奥からほっこりと温かくなる。疲れが癒されるような味にうっとりしながら食べていると、何やら生温い視線を向けられていることに気が付いた。
テーブルに頬杖を突きながら、閑が目を眇めて琴音を見ている。
「……ごめんなさい」
「なんで謝る?」
「全然、まともに話も出来てなくて。せっかく連絡くれてるのに」
眉尻を下げ、情けない顔で閑の表情を窺う琴音は、本当に申し訳ないとは思っている。思っているが、仕事に全体力を奪われ自分ではどうにもできない。こんな生活をもう何年も続けて来て、ずっと協力しあってきたチームメンバーにもできるだけこれ以上の負担をかけずに退職したかった。
「この三か月のメールと電話の感じでなんとなくは察してたけどな……」
「ごめんなさい、でも、もうすぐ仕事はちゃんと」
辞められるはず……、なのだが酷く不確定に感じる現状を口にするのを躊躇って、一度言葉を区切る。その後続いたのは、もうこの短い時間で何度目かになる閑のため息だった。