身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 そんな琴音を置き去りに、急に話も声も切り替えて閑が言った。

『じゃあ、日曜に。迎えに行く』
「え、あ、はい。わかった。……あ! あの!」

 このままでは何も言えないまま話が終わってしまう。慌てて礼を言おうとしたのだが……

「あの、あり……」
『おやすみ』

 何やら急いで電話を切られてしまい、ありがとうの言葉は最後まで言えなかった。

「ありがとう……」

 少々、強引な気もする。けれど、そうまでしなければきっと現状は変わらなかったし、純粋に心配してくれたことが本当に嬉しかった。だから、きちんと言いたかったのに。
 結局、何時に迎えに来るのかの時間も決めずに、らしくない彼の様子に首を傾げてしまった。


< 55 / 239 >

この作品をシェア

pagetop