身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
沈黙は、そう長い間ではなかった。しかし、次の閑の言葉に、琴音は驚く。
『黙って見ていたらそのまま結婚式の前日まで働かされそうだったからな』
その言葉は、いつもよりも低く強い声で、突き放すような口調に琴音には聞こえた。
『自分の婚約者を、いつ身体を壊すかわからないような環境で、後少しの間でも働かせるつもりはない』
だけれど、内容は面倒見のいい昔の『閑ちゃん』のままのようで。
「え」と、間抜けな声しか出なかった。言われた言葉は嬉しいのに、声が怖い。先週会った時にちらりと考えたことを思い出す。
やはり、怒っていたのだ。どうやら彼は静かに怒るタイプらしい。
会社に、しかも他社にあっさりと影響を与えることができる人なのだということに、そして今まで知らなかった閑の怒りにも戸惑って、呆然としてしまう。