身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「やっぱり選びなおしたいとかあれば、早いうちなら間に合うよ」
甘やかされているようで、くすぐったい感情に胸が騒めく。拗ねた表情はすぐに緩んで、気恥ずかしさに前を向いた。
「ううん、本当に、あれがいい」
たくさん着るのは楽しかった。デザインも色もそれぞれ魅力的で、閑も似合うと言ってくれた。けれど、最初に着たあの一着ほどには、胸に響かない。
『ちょうどいい』
閑がそう言ってくれたから、琴音の中で特別になったのかもしれない。
「その様子だと、指輪もあっさり決めてしまいそうだな。次の休みに見に行こう」
「指輪……」
結婚指輪だ。ふたりお揃いの指輪を、ふたりで選ぶ。またひとつ結婚に近づくのだと思うと、「指輪」と聞いただけでそわそわとしてしまう。嬉しい、と思えた。ドレスを見て、指輪を決めて……そういうことを熟していくたび、琴音はきっと嬉しいと思える。
「……楽しみです」
緩む口元を押さえて、ぽつりとつぶやく。
今は恋愛感情ではなくても、せめて閑にとっても『嬉しい』ことであってくれたらいいと思った。