身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
はっと、酔いから覚めたように目を見開く。唇のすぐ近くで温かな息が混じり合うのがはっきりと伝わって、焦ったように声を出した。
「雨ですね」
「ああ、降って来た。雨の予報だったかな」
「どうだったかな……でも、夕方は少し雲があったかも」
意味があるのかないのかわからない言葉を交わしている間も、ぽつぽつと不規則に雨音が続く。その音に急かされるように、閑が寄せていた顔を離し、最後に手を解放した。
「本格的に降る前に、中に入ったほうがいい」
くしゃっと琴音の頭を撫でた時には、もういつもの閑だった。
「ほら」
空になった指輪の箱を渡され、琴音は慌ててそれをバッグにしまう。
「は、はい」
夢の時間が醒めようとしているようで、一抹の寂しさを感じながらもドアの取っ手に手をかける。
「あの……」
「また電話する」
「はい。あの、今日はとても楽しかったです。……ありがとう、特別なデートにしてくれて」
琴音の言葉に、閑が何か含みのある苦笑いをする。それに首を傾げる間もなく、雨音が早くなって、琴音は慌てて車の外に出た。