身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 ――けど、ここ数年帰れてないんだよねー……。

 去年は正月休み返上で会社に泊まり込みだったし、その前の年はどうだったか……はっきり記憶にないが帰った覚えがないということはきっとそういうことだろう。盆休みにいたっては、いつもあってないようなものだ。
 ひとつの仕事が終われば、二、三日の連休がもらえるが大抵疲労回復に当てられる。高給に釣られてプログラマーになんてなるんじゃなかった。
 多少給料が安くても、クリエイティブ系のウェブデザインを目指すべきだったと、寝不足と疲労がピークに達するたびに後悔をする。

 決してやりがいが無いわけではないのだが、何年も実家に顔見せ出来ない仕事はダメだろう。
 のろのろと指を動かして、今年は帰ると返信すると、速攻で既読がついてこれまた速攻で返事があった。

「え。二宮のおばさまが来るの?」

 返信内容に目を通して、思わず独り言をもらしてしまった。親同士は仕事の付き合いもあるからそれなりに会っているのだろうが、琴音はもう十何年も会ってない。

 その『二宮のおばさま』が来るから必ず帰ってくるように、というニュアンスにちょっとした違和感があり首を傾げた。

 ――お姉ちゃんと閑ちゃんが結婚でもするのかな? でも何年か前に別れたって聞いたけどなあ。

 姉と彼は、昔から特別仲が良かった。だからよりを戻したとしても不思議ではない。深く考えずに『了解』と再度返信してしまった。

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