お願いだから、俺だけのものになって
「今日は、よろしくお願いします」
夕飯の準備のため
調理室に着いた私は
マネージャーとファンクラブのみんなに
挨拶をした
「こちらこそよろしくね
私たちグランドでまだ
マネージャーの仕事が残ってるの
そっち片付けたら
また戻ってきて手伝うから」
「わかりました」
マネージャーさんたちが
去った調理室は
私と
明らかに私のこと良く思っていない
ファンクラブの皆さんだけになった
ダメ!ダメ!
弱気になっちゃダメ!
笑顔で接すれば
いつかこの人たちとも仲良くなれるはず!
子供のころから
商店街のみんなに教わってきたことを思い出し
私は笑顔で料理の説明を始めた
「じゃあ、ハンバーグ作りをお願いします
まずは、玉ねぎのみじん切りから」
私への態度は
相変わらずトゲトゲだけど
目がしみる~~って言いながらも
一生懸命作るファンクラブの子たちが
すごく可愛く感じた
おいしいって
言ってもらいたい気持ち・・・
私もよくわかる!!
料理が完成して
隣の食堂に料理を運び終えると
「美紅さんも一緒に、夕飯食べない?」
「私たちマネージャーも
ファンクラブの子たちも食べるのに
美紅さんだけ食べないのも
なんか申し訳なくて・・・」
「私はいいです
サッカー部の皆さんに会わずに
料理したいと思っているので
それに味見ばっかりしてたから
お腹いっぱいなんです」
「わかったわ
じゃあ、私も夕飯いただいてくるわね」
「はい!
この鍋たちを洗い終えたら帰ります
明日もよろしくお願いします。」
「こちらこそ、本当にありがとう
美紅さん、明日もよろしくね」
みんなが食べている間に
鍋や調理器具など洗っちゃおう!
洗い物の量が多くて
時間がかかっちゃったけど
やっと洗い終わった!!!
持ち帰る荷物を
かごに詰め終えると・・・
ガラガラガラ~
え?
「やっぱり!!
弁当屋成瀬の美紅ちゃんじゃん!」
「本当だ!
卵焼きの味が、美紅ちゃんのぽかったから
もしやって思ったんだよな」
ぞろぞろと
サッカー部の部員たちが
調理室に入ってきた
夏樹さんも
ニコニコしながらこっちを見てる
そのあとに続いて
マネージャーさん達や
ファンクラブの子たちも入ってきた
「美紅ちゃんが
夕飯を作ってくれてたんだな
今までの合宿で一番うまいご飯だったよ
ありがとう」
夏樹さんが
優しい笑顔でお礼を言ってくれた
ありがとうございますって
笑顔で言わなきゃ・・・
営業スマイルでお礼を言って
帰ろう・・・
そう思っているのに・・・
サッカー部のみんなに
笑顔が向けられない・・・
昼間の部員さんの態度が
どうしても頭から離れなくて・・・
「もう・・・
うちのお弁当屋に・・・
みなさん来ないでもらえますか?」
「え?」
予想外の私の言葉に
サッカー部員が動揺しだした
「明日の朝ご飯の準備がありますので
お先に失礼します」
私が荷物を持って
部屋を出ようとした時
「美紅ちゃん、ちょっと待って!」
夏樹さんが真剣な顔で
私を止めた
「ごめん、俺たち何かしたかな?
言ってくれないと
モヤモヤして
練習に集中できないからさ・・・
素直に言ってくれない?」
「そうよ!美紅さん!
サッカー部の皆さんが
真剣に合宿に取り組んでいるのに
いきなりそんな言い方
あんまりだと思う」
ファンクラブのみんなも
それぞれ文句を言い始めた
「昼間・・・
皆さんの練習風景を見ました
ひたむきにサッカーに打ち込んでいて
カッコいいなって思いました
でも・・・」
「でも?」
「マネージャーさんや
ファンクラブの皆さんへの態度・・・
ひどすぎませんか?」
「え?」
「タオル!って怒鳴って命令して
飲み物の準備が遅いって文句言って・・・
サッカー部の皆さんのために一
生懸命お手伝いしてくれているのに・・・
やってもらうのが当たり前なその態度が・・・
どうしても許せなくて・・・
一生懸命練習しているのに
水を差すようなこと言って
すみませんでした
今日はこれで、失礼します」
私は慌てて荷物を持つと
逃げるように調理室を飛び出した
なんてことを・・・
言ってしまったんだろう・・・
サッカー部の皆を
傷つけるような言葉を
選んで言ってしまった・・・
もっと他の言い方が
あったと思うのに・・・
自分の高ぶる気持ちを
抑えられなかった・・・
昨日
奏多君とケンカ別れしたイライラを
ぶつけてしまったんだと思う・・・
私・・・
人として最低だ・・・
明日の朝
サッカー部の皆さんに
謝らなきゃ・・・