お願いだから、俺だけのものになって
その日の昼ごはんも終わり
片づけを済ませ
私のお役目はもうおしまい



荷物を両手に抱えて
校門を出ようとした時



「美紅ちゃ~ん!!
 待って!!」



「え?夏樹さん??」



「荷物重いでしょ
 家まで一緒に運ぶよ」



「え?でも・・・
 午後の練習があるんじゃ・・・」



「監督に許可もらったから大丈夫!
 荷物運び、手伝っていいって」



「私一人で持てますよ
 夏樹さんは練習に戻ってください」



「せっかくだから
 ちょっとくらいサッカーさぼらせてよ」



「フフフ」



夏樹さんって真面目そうなのに
さぼるなんて言うから
笑っちゃった



「美紅ちゃんってさ・・・
 思ったより
 はっきり意見言うんだね」



「・・・」



昨日切れてしまった自分が
恥ずかしすぎて
顔が赤くなってしまった



「あれはその・・・

 あの・・・

 ごめんなさい・・・」



「え?謝ることじゃないよ

 俺は美紅ちゃんのそういうところ・・・

 嫌いじゃないから・・・」



え?


それってどういう意味?



そう思いながら
夏樹さんを見たら・・・

夏樹さん
私よりも顔が真っ赤になってる!



それからお互い無言のまま
商店街を歩いた



「夏樹さん
 運んでくれてありがとうございました!

 サッカー、頑張ってくださいね」



「ありがとう」



夏樹さんは
学校へ向かって走り出した




あれ?


戻ってきた・・・




「美紅ちゃん・・・

 俺の彼女になってって言ったら・・・

 困るよね・・・?」



「・・・え?」



突然のことで
私の頭の思考回路は
停止状態・・・



「俺
 もう半年近く
 美紅ちゃんのこと好きなんだ!

 毎朝お弁当を買いに行ってるのだって
 美紅ちゃんに会いたいからで・・・」



「え・・・と・・・

 急すぎて・・・・・・」



「他に好きな奴とか・・・いる?」



そう言われ
奏多君が思い浮かんだ



違う!違う!

奏多君のことなんて
好きじゃない・・・



ただ・・・



プラネタリウムでのキスが・・・

忘れられないだけ・・・




「好きな人は・・・

 いません・・・」



「まだ
 俺のこと好きじゃなくてもいいから・・・

 俺と・・・

 付き合ってください・・・」



夏樹さんの真剣な眼差しから
なぜか目が離せられない



「ごめん・・・
 
 美紅ちゃんのこと・・・

 困らせちゃったな・・・」



夏樹さんは
悲しそうな目で私を見つめた後
私に背を向けて走り出した



「待ってください・・・」



その声とともに
私は夏樹さんの腕を
ぎゅーっとつかんだ



「え?

 美紅ちゃん?」



「・・・

 私で良かったら・・・

 よろしくお願いします・・・」



「それって・・・

 付き合ってくれるってことだよね?」



「はい」



夏樹さんはその場に固まって
放心状態になっちゃってる



「美紅ちゃん・・・
 
 ちょっとだけ・・・

 ギューってしてもいい?」



「え?」



私が答える前に
夏樹さんは私を抱きしめた



私への真剣な思いが伝わってくるような
優しいぬくもりが
想像以上に幸せだった



夏樹さんとなら
きっとたくさん笑えて
幸せになれそう



そして夏樹さんなら
奏多君を忘れさせてくれる・・・

きっと・・・



「よっしゃー!

 美紅ちゃんに癒してもらったから
 午後の練習もがんばれそう!」



太陽のような眩しい笑顔で
夏樹さんは練習に戻っていった




こうして私は
人生で初めての彼ができました
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