お願いだから、俺だけのものになって

(奏多side)

冬休みも終わり
また学校が始まった



クリスマスに
美紅とケンカ別れしてから

俺は美紅に連絡してないし
美紅からも来ないままだ



美紅にすっげー会いたいのに

あの時のことを謝りたいのに

たった3文字の
『ごめん』の言葉さえ
美紅に伝える勇気が俺にはない・・・



授業前
机に頭を乗せ
美紅のことを考えていると

クラスの女子たちが
ある話題でキャーキャーわめいていた



「ねえ聞いた?
 サッカー部の夏樹先輩
 彼女できたんだって」



「ファンの子たちも公認らしいよ」



「え???どんな子??」



・・・・

夏樹先輩に・・・・・

彼女・・・・?



「サンタのキャラ弁作った子でしょ?」



「そうそう!
 先輩が、ずっと片思いしてた子だって」



サンタのキャラ弁?

片思い・・・?

それって・・・・

美紅・・・?



嘘だよな・・・・?



そんなはずないよな・・・



信じたくない・・・


もう美紅が・・・


俺の手の届かない場所に
行ってしまったなんて・・・



このまま
夏樹先輩話で盛り上げっている
この教室にいたら

俺は人目もはばからず
無様に泣いてしまいそうで

情けない顔をかばんで隠し
教室を出て家に向かった



後悔してもしきれない・・・



プラネタリウムで
俺のために美紅が作ったキャラ弁を
素直に喜んで食べていたら・・・



サッカー部の合宿に行くね
と言う美紅に

「がんばれよ!」って
男らしく応援していたら・・・



『美紅が好きだ』って
素直に伝えられていたら・・・



そしたら美紅は
夏樹先輩と
付き合わなかったんじゃないのか・・・



美紅が好きすぎて
夏樹先輩に嫉妬した
俺自身のせいだ・・・




でも・・・
それも違うのかもしれない・・・




先輩は
一つのことに真剣に向き合う人だ



美紅を思う気持ちも
俺が負けていたのかもしれない



ガキっぽい俺みたいに
嫉妬で美紅を傷つけるようなことは
言わないだろ・・・



大人だからな・・・

夏樹先輩は・・・




こんな辛い思いをするなら
一人の女性を
真剣に愛するんじゃなかった・・・



プラネタリウムで
キスなんかしなきゃよかった・・・



一緒にクリスマスツリーを
見に行かなきゃよかった・・・



マッチ売りの少女に
マフラーをかけなければよかった・・・




美紅と笑いあったあの時間が
もう戻らない辛さが
心をギューっと締め付け

俺は一人 
細い路地にしゃがみ込み
泣いた


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