お願いだから、俺だけのものになって
それからの俺は
また女の子と
はしゃぐ日々に戻った
美紅を忘れるために
俺の心の傷を
一時的にふさぐために
「おい奏多!
お前最近、変じゃねぇ?」
「なんだよ尊(みこと)!」
「別に・・・
何でもなきゃいいけどさ・・・
最近の奏多さ
フッって暗い顔する瞬間あるじゃん」
「そんなことねえし
へたれライオンの尊君の
勘違いじゃね?」
「へたれライオンって呼ぶな!」
さすが幼馴染の尊だな!
美紅がいなくなった寂しさを
隠してるつもりだが
尊には俺がオカシイって
わかるんだろうな
でも尊との何気ないやり取りは
暗闇に沈む俺の心を
サッと引き上げてくれる
尊に感謝だな!
本人には
恥ずかしくて言えないが
美紅に会いたい!
美紅に会いたい!
美紅に会いたい!
美紅に会いたい!
会って
プラネタリウムでのこと
謝りたい・・・
そして
俺の気持ちを伝えたい!
「夏樹先輩と別れて・・・
俺だけのものに・・・なって」
って・・・
「尊~俺さ~
今度のライブ用に、歌作っていいか?」
「奏多!
ライブって1か月後だろ!
間に合うのか?」
「わからない・・・
でも、やるだけやってみたい!
そんでその曲、ライブ当日に
俺に歌わせてほしい」
「真剣なんだよな?」
「ああ~」
「まあ~
奏多にダメって言っても
どうせ聞かないだろうし
思う存分やれば!」
「尊!サンキュ~」
「その代わり
他の曲もしっかり練習するからな!」
「オオ~」
俺はその日から
人が変わったように
曲作りに没頭した
女の子達の誘いを一切断り
学校が終わったら
自分の部屋にこもり
ひたすら歌を作った
俺の今の気持ちを
全てこの歌に込めたい!!
そして
彼がいるとわかっていても
好きで好きでしかたがない美紅に
俺の思いを伝えたい!!
俺が夏樹先輩に勝てる場所は
ステージの上しか
なさそうだから・・・
美紅を思って歌詞を作っていると
心が締め付けられるように
苦しくなる
苦しくて苦しくて
息ができなくなったように苦しくて
逃げ出したくなる
俺に笑顔で微笑む
天使のような美紅を好きすぎて
嫉妬という魔物が
美紅の心を
グサグサと切り刻んだんだから
それをしてしまったのは
自分に自信がない
弱い心を持った俺自身だから・・・
そんな過去の醜い自分と向き合わないと
書けないんだ・・・
美紅への思いを詰め込んだ歌が・・・