約束
【大好きな人】
私の恋人は、バレエスクールの先生。

高校生になった頃からお世話になっている人。厳しいけれど優しさもあって、15歳も年上のその人は、私の憧れでもあり大切な存在だった。

十代の終わり、私は世界の舞台を夢見て、多くのコンクールに参加したり、外国のバレエ団への入団も希望していたけれどなかなかうまくいかなかった。
いろんなことが悪循環で、完全にスランプに陥っていた。

「君も少し休みなさい」

彼が優しく言ってくれる。「君も」となったのは、ご自身もいろいろと──スクールのお金が少額だが横領されていたり、奥様の夜遊びが判ったり……それでも周囲に当たり散らしたり、不機嫌な様子すら見せないのは、大人だと思った。

「でも……動いていないと不安で……」

そんな事を言う私に、先生は朝から晩まで付き合ってくれた。

一日の殆どを過ごすうちに、先生と生徒、その関係が変わるのに時間はかからなかった。
お互い弱っていた頃だったから、と言い訳していた。
先生に触れられるだけで嬉しくて、幸せに満たされて、自分が存在していていいのだと思わせてくれて──それが欲しくて、もっともっとと求めたのは私の方だ、それでも先生も嫌がらずに私を傍に置いてくれた。先生にも私が必要だったのだと思いたい。
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