右へならえ
3
あっ、頭痛い。

ここはどこ?
見たことのない天井。

フカフカの布団。
気持ちいい〜。
肌触り最高〜。
私、夢を見てるんだ。

寝返りをうつとそこには……。
……。
えっ?
えっ?
え〜っ!

なっ、なんで竜之介さんがいるの?
と、同時にあまりにも寝顔が綺麗で
思わず、頬に触れてみたくなった手を
ギュッと握った。

「おはよう」
「おっ、おはようございます」

私は動揺して、上手く挨拶ができなかった。

「ごめんなさい。ご迷惑かけてしまって」
「あぁ、別に平気だよ」

完璧、迷惑かけてる。

「今、すぐ帰りますから」

あれ?私……。
なっ、何かやらかしちゃったかな?

「もしかして、私……。
変なことしました?」
「あっ、あ〜。まぁね」

苦笑いしながら答える竜之介さん。

どっ、どうしよう。
もう、この場から立ち去りたい。

お姉ちゃん〜。
お兄さん〜。
ごめんなさい。

恥さらしな妹をお許しください。

「ほんと、今すぐ帰ります。
お借りしたTシャツは、
洗って返しますので」

頭を下げながら、
勢いよく話した。

「いいよ。そのまま置いていってくれたら。わざわざ洗わなくても、
こっちで洗うから」

苦笑いしながら話す竜之介さん。
きっと呆れてるよね……。

「何をしたか、わからないですけど
全部、忘れてください。
で、申し訳ございませんが
洗面所、お借りしても宜しいですか?」
「……。はははっ。麻知ちゃんおもしろいね。
洗面所はこっちだよ」

笑いながら洗面所を案内してくれた。

なんでこんなことになってるの?
何やってるんだかぁ。私……。

早く着替えて、家に帰らないと。

リビングのドアを開けると、
コーヒーのいい匂いがした。

「コーヒー入れたから飲む?」
「いえ、私はこのまま帰らせていただきます」
「まぁ、そんなに急がなくてもいいじゃん」

私の背中を押した。

「お言葉に甘えて、1杯だけ」
「よかった」

もう、その笑顔は反則です。

「いただきます」
「はい、召し上がれ」

私はコーヒーを飲んだ。

「美味しいっ」
「だろ?朝、これ飲むと
今日も頑張ろうって思うんだよね」

その仕草が、あまりにもカッコ良くて
見惚れてしまった。

なんでそんなに優しくしてくれるの?

「麻知ちゃん?」
「へっ?あ〜っ、ごめんなさい。
つい、見惚れてしまって……」

なに?私、今とんでもないことを
さらりと言ってしまった。

どっ、どうしよう。
もう竜之介さんの顔見れないよ〜。

「麻知ちゃん、ありがとう」
「えっ?」
「ふふっ。かわいい」

私の頭を撫でて、笑う竜之介さん。
こんなことされたら
もっと好きになってしまうよ。

私の顔が赤くなっていくのが
自分でもわかった。



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