溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 自宅に着くと、椋はすぐにお風呂に入るように勧めてくれた。椋が先に家に帰ってきた時にすでに準備していてくれたようで、すぐに入れるようになっていた。
 花霞は頭の上から爪先までぐっちょりと濡れてしまっていたため、ありがたくその好意を受けた。
 湯船に入っている間、体が楽になっていたけれど、頭は上手く働かずにボーッとしてしまった。思い出すは、冷たい視線で見つめる玲の顔と、指輪を見つけた瞬間だった。


 花霞の左薬指には今、指輪はなかった。
 椋が「綺麗にしておくよ。」と言って預かってくれたのだ。花霞は自分の左指に指輪がないだけで、落ち着かなく寂しさを感じてしまっていた。



 お風呂から上がると、椋が暖かいスープを作って待っていてくれた。「あるもので作ったから、具は少ないけど。」と言って準備してくれたのだ。
 本来ならば花霞が夕食を作る予定だった。それなのに、また彼に作らせてしまったのだ。
 花霞は申し訳なく、「私が作るって思ってたのに………ごめんなさい。」と、謝ると椋は優しく微笑みながら首を横に振って答えてくれた。
 

 「はい、これ。泥は取ったんだけどまだ奥に入ってしまってるし、細かい傷が目立つんだ。」
 「…………。」


 花霞は椋から自分の指輪を受け取り、手の中におさめた。確かに傷はついていたし、小さな石が入っているようだった。けれど、そんな事は全く気にせずに、花霞は薬指にその指輪をはめた。



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