【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
宿泊施設の光が見えてきた。


「やっと戻れたね」


「……うん」


あーぁ、もう迷子終わりなんだ……。

もう少し一緒にいたかったのに。



「こらぁ!!」



ひっ、びっくりした……。

遠くから聞こえた怒鳴り声は、生活指導で学年主任の田島先生のものだ。


「やば。かくれよう」


灰野くんとあたしは再び暗闇の中へ。


ツツジの木に隠れてしゃがみ込む。



すぐ隣の灰野くん

間違ったら腕が触れちゃいそうなほど近いよ……。



距離の近さに下を向きたくなっちゃう。

灰野くんは真顔で先生たちのほうを覗っていて。


「……ナギたち捕まったなぁ。もう10時か」


「え、もう?」


自由時間は9時までなのに、うっかりしちゃった。




「今年は4人か!まったく!もういい!早く部屋に戻れ!」


「はぁーい」

長々とした説教の後で、テンションダダ下がりの返事をした四人が教室に帰っていく。


「先生あそこに立ってんのかぁ……どの道で行こうかなぁ」



……ずっとここにいたい。とか言って。

そんなこと呑気に考えていたら、


「やば。花こっち来て!」


……え?


気づけば、灰野くんに腕を引かれて、走っていた。


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