【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「ここならなんとかなるかなぁ。一旦ここで待機しよ」


木の裏に身を隠す。


……灰野くんは、気付いてないのかな。


今あたしのこと、花って言ったよね?


隣のクラスの美人。それから灰野くんの隣を独占していたあの姿。
HANA。シロクマのマスコット。


次々と頭に浮かんでいく。



「……あたし、”花”じゃないよ」


「ん?」


「灰野くんあたしのこと”花”って呼んだよ」


からかうみたいに、笑ってやれ。


「ほんと?ごめん」


ごめんじゃないよ……。


「ううん。灰野くんは……まだ好きなの?藤堂さんのこと」


「……」


灰野くんは何も答えない。否定しない。


それって、YESっていう意味。


ふとしたとき名前間違えちゃうのって、頭の中がその人でいっぱいだったから?



あたしは、灰野くんばっかりなのに。


「はぁ……」


もし、ここにいるのがあたしじゃなくて藤堂さんなら。


灰野くんは話も弾んで、もっと楽しそうにしているんだろうな。


だってそういう二人しかみたことないもん。


藤堂さんといる灰野くんは、あたしといるときとは全然違う。


隣にいるのがあたしでごめん。





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