【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
昼休みが終わりかけた頃、「藍田さん」と山本君に肩を叩かれた。


赤っぽい茶髪の似合う彼は「この前の質問聞いといた」とあたしの耳元に手を添えて囁く。


この前の質問……あ!


”灰野くんは藤堂さんのこと、好きなのかなぁ?”


きっとこの話だ。


「灰野くんに聞いてくれたの?」


「うん。それでね」


―――藤堂さんのこと好きなのか伊吹も”わからない”。


だって。



「そ、それって……。好きってことなんじゃないの?」


笑いきれない顔で山本君を見上げると彼は困り顔で溜息をついた。


「うまくいかないね?」って。


……うまくいかない、と。


好きな人の親友に断言されてしまったあたしは、間接的な失恋をしたってことで。


灰野くんにはわかりやすいくらい嫌われてるし……わかってるけど。


はぁ、でもやっぱりショック。



「山本!」


「あ、やば、伊吹に怒られる」


のけぞるようにあたしから距離をとった山本君は、両手をパッと開いて、灰野くんに見せつける。


それでも灰野くんは、凄い勢いで山本君を手招きしていて。



「灰野くんすごく急いでるよ?」


「急いでないよ。ああ見えて伊吹は独占欲の塊だからなぁ?はいはい、今いきまーす」


独占欲の塊?

灰野くんってそんなに、山本君のこと独り占めしたいんだ……。いいなぁ、山本君は。



灰野くんの元に戻った山本君はバシッと肩を叩かれて笑っている。


……ほんとに、仲良くて羨ましいよ。



「はぁ……」


窓の外を見ながら、ひとり黄昏るあたしの横に、ナギちゃんが来た。



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