【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
熱を持った灰野くんの視線があたしだけを貫いて、思考停止。
「ねぇ、藍田さん」
あたしを覗き込んだ綺麗な目に追撃される。
「……好きなひとのことだけを見ててよ」
な、何言ってるの灰野くん……?
その、好きな人が灰野くん自身だった場合を考えてないの?
鈍感すぎるんだよ、灰野くんは……!
ね、ねぇ?
どういう意図があって、あたしに詰め寄ってるの?
あ、もう、こんなに近い……。
「も、もうだめ……」
「え?」
「し……」
「し?」
「心臓がもたない……」
へなへなとその場にしゃがみ込むあたしを見て、灰野くんは遅れてプッと笑った。
「まぁ……藍田さんに計算はできないよね」
そういってあたしの隣にしゃがみ込んだかと思えば、灰野くんは長く溜息を吐いた。
「かっこ悪いことばっかり言ってごめん」
すっと立ち上がって、教室を出て行った。
ねぇ、この心臓、どうしたらいいの?
無自覚で鈍感で誰より罪深い人、灰野くん……。
「はぁ……灰野くんがヤバい……」