【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
ところどころ緑や茶色がへばり付いたプールを見渡す。
掃除前に水を入れ替えたのか、水深10㎝の水はかろうじて透明だ。
西日が長く影を伸ばす放課後。
猛暑日が近づいていることをダイレクトに伝えんとする太陽が、じりじりと照りつけている。
額ににじんだ汗をぬぐいながら、
途方もなく広がってみえるプールを眺めて、俺は悟る。
ここを6人で掃除させる田島先生っていうのはサタンの類だ。
水に足をつけると意外とぬるくて、底についたつま先がぬめっと滑る。
全身に鳥肌が広がった。
ああ生理的に無理。
悲鳴を上げながら足を水につけている女子たちを横目に、真面目にデッキブラシを動かす。
早く終わらせたい、逃げだしたい。
掃除と、足にまとわりつく水よりも生ぬるい視線たちから。
そう、お前の。特にお前のな?山本。
「藍田さんにはあえて聞かないけど、何があったんだよ?」
山本は半笑いでへらへらと歩み寄ってきた。