【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
首を傾げて言う俺に、藍田さんは「えっ」とひるんだ。


「が、がんばる、ね……」


頑張るって言いながら、目をぎゅっと閉じて開けて、何その目。
そんな困り顔で見ないで。


もういいよ。
その指先めちゃくちゃ震えてるじゃん。



ほんとに、藍田さんって……。



「……嘘にきまってんだろ、ははっ」



堪え切れずに笑って言ったら、藍田さんはプクっと頬を膨らませて、いつの間にか口許だって怒っている。


……そんなの初めて見た。


「怒ってんの?」


俺に向けられた怒りの表情をみるのは14年目にして、初めてだ。


残念ながら全然怖くないよ、それ。

……めちゃくちゃ可愛い。


でも、怒ってんだもんね。


「ごめんね」

一応謝っておいた俺に、藍田さんは慌てて言った。


「こっちも、怒ってゴメン……!」


ぱしんと合わせる手は、ナギにやるのよりずっと他人行儀。

別にそのまま怒ってていいのに。

もっと、ナギにするみたいに素で接してほしい。

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