【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「飴やるから泣くなー」
「……子供だまし」
「いんだよ。16歳だからな。うまくない?」
「ん。おいしい」
「だろー」
満足げに笑うナギちゃんは、ポン、ポン、と優しくあたしの肩を叩く。
彼は中学から同じ学校に通うあたしの唯一の男友達。
初カノは小学生の頃にできたらしいし、中2、3と彼女が途切れなかったという恋愛エキスパート。
日に焼けた肌、整った顔立ち、それに人懐っこい性格で、一般的にモテるって言われるところにいるナギちゃん。
黒い髪は長めだけど爽やかっていう、いかにもなサッカー部で。
中学の頃、学年でイケメンは誰だみたいな話になれば、灰野くんとナギちゃんの名前ばかりあがってたっけ。
そんなモテ男ナギちゃんには、去年から一途に好きな人がいる。
それを知っているのはあたしだけで、ナギちゃんもあたしが灰野くんを未だに好きなことを知っている。
あたしたちの仲を具体的に言えば、【恋の相談をしあう相手】で、今もその真っ最中だ。
「脈がなさすぎてへこむなぁ……」
「俺はその方が燃えると思うけどねー」
「ナギちゃんって前向きだよね」
そういうところ、尊敬する。