【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
すぐ傍の保健室の掲示板に手を伸ばして、丸い磁石を二つ借りた。
赤色の面……N極の同士をちかづけると……。
ぴょいんぴょいんと弾きあう磁石。
「ほらね」
なんでこんなこと知らないんだろう?
「いや、ちがくて」
ちょうだいと向けられた手のひらに磁石を置いた。
「こうすればくっつく」
「……!」
灰野くんは賢い。そしてせこい。
N極を表にして隣り合わせた二つの磁石はぴったりくっついた。
灰野くんがゆらゆらと揺らしても落ちることなくくっついていて……。
「隣り合えば普通にくっつくんだね……」
「腐っても磁石だからな」
「……ふふ、ほんとだ」
「だからくっつかないとか、そういうくだんないこと気にしないで」
「はい……」