【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
なんで今更、数年前のこと引っ張り出してんの。
まじでダサい。
「……どっち、って……」
藍田さんのこわばった顔から目を背ける。
やっぱりイマサラすぎたよね。
もういい加減にしろって
俺だって思うんだよ。
「……」
なんで即答できないの?
ナギが今、傍にいるから?
「灰野くんだったよ」
ほんの少し胸が軽くなる。でもそれは束の間のことだった。
「どうしていまさらそんなことを聞くの?」
藍田さんの声は震えていた。
イマサラ、しつこくてごめんね。
そんなことを嫌味っぽく心の中で唱える俺は、どのくらい顔をしかめているんだろ。
「そろそろ戻ってもいいかな」と藍田さんは泣きそうな顔で無理やり唇に弧を描いて、くるっと周れ右をする。
―――ごめん。
その声を届ける間もなく離れていってしまう彼女を追いかけるのは当然のようにナギで。
あーあ、俺まじダサい。
「灰野も早く戻れよー」
ぽつんと佇むここに、風が流れた。
さわさわと揺れる青い葉を見上げて「はぁー」とため息を零す。
……なんで俺っていつもこうなんだろ。
後悔を残すことばっかり選んでしまう。