【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
って、どれも聞けないよ。


何か、みんなにとっても面白くて、灰野くんを傷つけない質問ってないかな。


ううーん……。


そしたら、よくある定番の。
あたしも知りたいこと。


「灰野くんの、好きな女の子のタイプはどんな子ですか」


あたしの質問が正解みたいに周りは盛り上がる。


「えぇー……」


灰野くんの困り顔に、ドキドキする。


「なんだろう……」と悩む横顔を恍惚として見入る。


そんなあたしの頭にナギちゃんの手がスコンと落ちてくる。


ありがとう、戻ってこれた。


「髪が長い人」


髪……伸ばしててよかった。
と思ったのも一瞬で消え去る。


脳裏に浮かんだのは、長いストレートへアをひとつにくくる藤堂さん。


「えーお前髪伸ばしてたらオッケーなの?もうちょいないわけー?」


山本君にせっつかれて、灰野くんはまた考え込む。


そんな彼を見ながら、やっとあたしは気づいた。


あたしはなんて自虐的な質問をしてしまったんだろう。


……灰野くんは、きっと今から、藤堂さんの特徴を並べる。


「最低三つだな!好きな子の要素三つ!」


三本指を灰野くんに向ける山本君は満面の笑みで、
彗もリホちゃんもナギちゃんだって、面白そうに灰野くんの言葉を待っている。


あたしの質問は罰ゲームとしては間違っていなかった。


けど……。違うのにすればよかった……。

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