月夜に花が咲く頃に
鬼神は少しいらついたように私をベッドに押し倒した。


な、なんだこの状況は?


なにがどうしてこうなった!?


「あ、あの、鬼神・・・・・・」


「お前、無防備すぎ」


「え?」


なぜか怒っている目の前の男。


無防備って、なんのことだ・・・・・・?


きょとん、としてとりあえず見つめ返すと、鬼神は盛大なため息をついた。


「そんなんだからほっとけねえんだろうが」


鬼神はぼそっと呟いたけど、上手く聞き取れなくて。


聞き返そうと口を開いたけど、鬼神の顔が思ったより近くにあることに気づいて、ぱっと目をそらした。


「・・・・・・なんで目ぇ逸らす」


「いや、なんか、近いっていうか、なんていうか・・・・・・」


そろそろ戻らない?と顔を背けたまま言うと、鬼神の手が頬に触れた。


そのまま強引に顔の向きを変えられ、鬼神と目が合う。


そのまっすぐな目に、胸の奥がどくんと高鳴って、なぜか顔が熱くなった。


性格がどんなでも、その顔は確かに整ってるわけで。


ここまで顔が近いと、なんというか、恥ずかしい。


たじろぐ私に、鬼神は大きなため息をつく。


「お前なあ・・・・・・」


何か言いかけた鬼神だったが、その言葉を飲み込んでさらにぐいっと顔を近づけた。


「お前が悪いんだからな」


訳が分からず、顔は近いままで、もう耐えられなくて。


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