キミ、が欲しい
もう一度その桜庭と名乗る彼の前に立った。
揺れる瞳で不安そうに私を見てる。
そっと髪に触れた手に想いを託すけど……
「綺麗な色………」
綺麗なオレンジがかった栗色。
「アハ、でも思い出せないや。ごめんね?あ、もしかして前にちょこっと付き合ってたとか?」
湿気た空気にならないように明るく言ってみる。
俯いた顔。
泣いているようにも見えた。
「うーん、脳の検査では全く異常なかったし……やっぱアレかな?頭打ったせいで一時的な記憶の混乱かも」
お母さんの言葉にまだ皆不安そうな顔。
「拓海と付き合ってたの中3だよね?」
「星那、あんた今いくつだっけ?」
「ちょっと娘の歳くらい忘れないでよ、15になったばっかだよ?」
「ほらね、ちょうど2年前に戻っちゃってるわ」
「ねぇ、2年前って何?何で皆N校の制服着てんの?うちらまだ中学生…だよね?」
軽く聞いたら本気で心配されて「とりあえず休みな」と無理やり寝かされた。
「おい、星那!忘れたとは言わせねぇぞ、ハルが全てだって、失いたくないって俺に言ったろ!」
ものすごい勢いで言ってくるから一瞬面食らったけど、クスッと笑う。
真っすぐ私を見つめる拓海の頬に触れる。
「なに?キスしたいの?ダメだよ、皆居るんだし」
呆然と立ち尽くす皆の前でイチャついてみる。
「ハルだよ!星那、そう呼んでたんだよ!この瞳に惚れたんだって、ほら!よく見て!」と麻衣子たちが桜庭くんを前に出す。
再び目が合って……しばし見つめるけど。