女嫌い公爵との幸福なる契約結婚生活
式を終え、新居までの道のりを馬車で揺られている際も、ネイトは全くアイリーンに話しかけようとはしなかった。しきりに窓の外に顔を向けており、こちらを見る気配すらない。
アイリーンは、次第に不安になってきた。ブライアンは孤児院で働くアイリーンをネイトが気に入ったと言っていたが、とてもではないがそんな風には思えない。
好意を抱かれているどころか、拒絶されているようにすら感じる。
「あの……」
馬車に乗ってしばらく経ったところで、アイリーンは意を決して声を出した。
「これから、どうぞよろしくお願いいたします」
心臓が喉から飛び出しそうなほど緊張していた。それくらいネイトの威圧感はすさまじく、夫婦になったというのに、同じ空間にいるだけで息が詰まりそうだ。
ネイトは窓枠に頬杖をついたまま、ちらりとだけアイリーンを見た。そして「ああ、よろしく」と、素っ気なく答える。
それから窓の向こうに視線を向けたまま、淡々と語り出した。
「邸についたら、家令に家の中を案内してもらうといい。少し休んだら、俺の部屋に来てくれ。言っておきたいことがある」
(言っておきたいこと……?)
さっそく自分が何か失態をやらかしたのかと、アイリーンは不安になる。だからネイトはこんなにも冷たい態度なのだろうか。
「分かりました。お伺いいたします」
それ以降、二人は一言も会話をすることがなく、やがて馬車は新居に辿り着いた。到着するなりネイトは先に馬車を降りて、アイリーンをエスコートすることもなく、一人さっさと屋敷の中へと入って行った。
アイリーンは、次第に不安になってきた。ブライアンは孤児院で働くアイリーンをネイトが気に入ったと言っていたが、とてもではないがそんな風には思えない。
好意を抱かれているどころか、拒絶されているようにすら感じる。
「あの……」
馬車に乗ってしばらく経ったところで、アイリーンは意を決して声を出した。
「これから、どうぞよろしくお願いいたします」
心臓が喉から飛び出しそうなほど緊張していた。それくらいネイトの威圧感はすさまじく、夫婦になったというのに、同じ空間にいるだけで息が詰まりそうだ。
ネイトは窓枠に頬杖をついたまま、ちらりとだけアイリーンを見た。そして「ああ、よろしく」と、素っ気なく答える。
それから窓の向こうに視線を向けたまま、淡々と語り出した。
「邸についたら、家令に家の中を案内してもらうといい。少し休んだら、俺の部屋に来てくれ。言っておきたいことがある」
(言っておきたいこと……?)
さっそく自分が何か失態をやらかしたのかと、アイリーンは不安になる。だからネイトはこんなにも冷たい態度なのだろうか。
「分かりました。お伺いいたします」
それ以降、二人は一言も会話をすることがなく、やがて馬車は新居に辿り着いた。到着するなりネイトは先に馬車を降りて、アイリーンをエスコートすることもなく、一人さっさと屋敷の中へと入って行った。