女嫌い公爵との幸福なる契約結婚生活
いろいろなことが唐突で、奇妙だとは思っていたが、ネイトの言葉でアイリーンは全てを察知した。

ブライアンがアーチボルド家の子女との結婚を決めたのは、オズモンド家を救うためだった。そしてアーチボルド家の子女を妻に迎えるために、ネイトの手を借りた。ネイトはその見返りに、自分の条件に合う結婚相手を、ブライアンに要求した。

ブライアンがネイトにアイリーンを紹介したのは、アイリーンを信頼してのことだろう。どんな条件かは知らないが、アイリーンなら、ネイトの掲示する条件を呑むと確信したに違いない。結婚相手などいくらでも見つかりそうなネイトが、極秘に従兄弟に依頼するようなことだ。その条件とは、おそらく常識はずれで突飛なものなのだろう。



「……すべて聞いております。すみません、新しい生活が始まったばかりで、少し動揺しておりました」

この結婚は、ブライアンのため。そう考えると、うれしいような苦しいような心地になる。けれどもネイトに悟られないよう、アイリーンは必死に平常を保った。

そんなアイリーンを、豹のような金色の瞳がじっと見つめている。

「そうか、それならよかった。では、改めて君に話そう」

ネイトは長い足を組み替えると、アイリーンを食い入るように見つめながら口を開いた。

「俺は女が嫌いだ」


< 17 / 35 >

この作品をシェア

pagetop