女嫌い公爵との幸福なる契約結婚生活
ブライアンは、アイリーンが見てきた多くの貴族と違って、生家が裕福なことをひけらかしたりはしなかった。アイリーンがどんなに薄汚れた格好をしていても、彼女を見る目は穏やかで、口調は優しかった。

逢瀬を重ねるうちに、まるで春の風のような人だ、とアイリーンは思うようになった。

ブライアンといると、心が安らぎ、自然と笑顔がこぼれる。

この感情が恋だと気づくのに、時間はかからなかった。

だから、彼の方から愛を告白されたときは、天にも昇る気持ちだった。

「僕は、君との将来を真剣に考えている。少しずつ手はずを整えていくから、待っていてくれないか」

交際を始めて一年が経った頃、ブライアンはアイリーンを真っすぐに見つめ、そう言った。

ブライアンは自分との結婚を考えてくれているのだと、アイリーンはその時初めて知った。胸がぎゅっと締めつけられて、なぜだか泣きたい気持ちになった。同時に、ブライアンとアイリーンの結婚は一筋縄ではいかないことも理解していた。

ブライアンは、社交界でも名高い伯爵家の次男。一方のアイリーンは、社交界デビューすらできない、落ちぶれた男爵家の娘。アイリーンの両親はともかく、ブライアンの両親がこの結婚に賛成するとは到底思えない。

だからブライアンは、時間をかけて、アイリーンとの結婚の筋道を作ると言ってくれたのだ。

ブライアンの実直な想いと優しさが身に染み、アイリーンはいつまでも彼を待つつもりでいた。
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