華道家元の溺甘レッスン
3話

〇柾の自宅

凡奈(こんなに近くに誰かの体温があるの、久しぶり…
  どうしよう、心臓が口から出そう…!)

赤くなって黙り込む凡奈に気付き、
柾がはっと体を離す。

柾「すみません、夢中になってしまって、
 僕としたことが、
 なれなれしすぎましたね…。」
凡奈「い、いえっ!」

ははは、と二人で照れ笑いをする。

その後はいけばなの基本の型を一通りやり、
実際にいけてみて、
夢中になる凡奈を柾が優しく見守っている。

凡奈「すごいですね、
  角度と奥行きだけで、
  立体感が全然違って見える。」
柾「そうなんです。
 凡奈さんは、すごく勘がいいですよ。
 すぐに上達すると思います。」
凡奈「専門時代に立体造形をやっていたので、
  それを思い出しながらやってみたんですけど…
  これは仕事にいかせそうです!」
柾「それはよかった。」

そこへ、電話がかかってくる。
柾が受話器を取り、相槌を打っている。
柾の秘書の来島からレストランの時間だということを知らされている。

柾「凡奈さん、実はこの後お食事ご一緒しようと思いまして、
 レストランを予約していたのですが、
 もしご都合よろしければ、いかがでしょう?」
凡奈「ええっ!
  あの、お気遣いいただいてありがとうございます!
  ご迷惑でなければ、ぜひ…!」
柾「では、ご案内いたしますね。」

凡奈(こんなにいろいろしてくださるなんて、
  私、疲れすぎて都合のいい夢でも見てるんだろうか…。)


〇レストラン

見るからに高そうなレストラン。
メニューはコースのみ、
広げられたワインのメニューはとても高価なものばかり。

柾「お飲み物、何にされますか?」
凡奈「あのっ…!
  お恥ずかしいのですが、
  私の予算がちょっと…!」
柾「いえ、お気になさらないでください。
 女性に出していただくわけにはいきませんので。
 今日頑張ったごほうびです。」

にっこり笑う柾。
凡奈の方はあたふたしてしまって、
なかなかワインを決められない。

柾「…じゃあ、お店の方にワインはおまかせしちゃいましょうか。
 すみません、なんだかお気を遣わせてしまったみたいで。」
凡奈「いえっ、こちらこそ、すみません、
  こういうのに慣れていなくて…。
  私、かっこわるいですね。」
柾「そんなことないですよ。
 逆に、なんだか、ほっとしちゃいます。」

やがてワイン(柾は車なので炭酸水)と食事が運ばれてきて、
会話をしながら食べ始める二人。
あまりのおいしさに目を輝かせっぱなしの凡奈。

凡奈「すっごく美味しいです…!!
  こんな美味しいもの食べたの初めて!」

すごくにこにこしている柾に気付いて、
はっとして恥じらう凡奈。

凡奈「やだ、恥ずかしい…!
  私、こんなにはしゃいじゃって…。」
柾「いえ、そんなに喜んでもらえるなんて、
 お連れしてよかったなって思います。
 僕も嬉しくなっちゃいます。」
凡奈「なんだか正木さんにはお恥ずかしいところばっかりお見せしてしまって…
  出会った日も本当に…。」

出会った日の醜態を思い出してしゅんとする凡奈。
それを見て思わず吹き出す柾。

柾「でも、僕はすっごく楽しいです、
 凡奈さんとお話しているの。」

ふと寂し気な表情をする柾。

柾「取り繕われたりご機嫌を窺われたりするのは、
 本当に嫌なものですから…。」
凡奈「正木さん…。」

凡奈「私でよかったら、
  いつでもお話し相手になります。
  あんまり大したこと言えないかもしれませんけど…。」
柾「ありがとうございます。
 凡奈さんと話していると、
 とても心が安らぎます。」

優しいまなざしで凡奈を見る柾。
凡奈はドキッとして頬を染める。

凡奈(男性にそんなこと言われたの、
  初めてかもしれない…。)


〇凡奈のマンションの前

凡奈「送っていただいてありがとうございます。
  今日はすっごく楽しかったです。」
柾「僕もです。
 このまま帰したくないくらい。」
凡奈「え?」

柾、ぐっと凡奈を引き寄せて、抱き締める。

柾「また、会ってくれますか?」
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