華道家元の溺甘レッスン
2話

〇高級ホテルの一室

凡奈(どうしよう…!
  出会ってすぐこんな…。)
  (とりあえず、服探さなきゃ…!)

辺りを見渡すが、どこにも服はない。
しかし、浴室を見たとき、二人の服が物干し紐につるしてあるのを発見する。

柾「おはようございます、凡奈さん。」

バスローブ姿の柾。
きゃっと言いながらバスローブの前を寄せる凡奈。

柾「すみません、驚かせてしまいましたね、
 部屋がダブルしかあいていなくて…」
凡奈「…」
柾「凡奈さん、すごく酔ったみたいで、気持ちが悪くなったみたいで…それで…」
 「服が、その、よごれてしまって…」

うっすらと記憶がよみがえる凡奈。
昨夜、酔った凡奈が柾にリバースしてしまっていたのだ。

青ざめる凡奈。
土下座でもするような勢いで謝る。

凡奈「ほ…本当にすみません…!!!
  私…はずかしい…」

凡奈(ほんと…消えたい…!!!)

柾「いえ、いいんですよ、
 楽しかったみたいでよかったです。」
凡奈「本当にすみませんでした…。
  あの、なにか、お詫びをさせて下さい…!」
柾「いやいやそんな…」

なにかを考え、思いつく柾。

柾「それじゃあ、凡奈さん、いけばなを続けてください。
 僕が個人レッスンします。」
凡奈「いけばなの…個人レッスン…?」
柾「そうです。
 凡奈さんに、好きになってほしいので。」
凡奈「もちろんです!
  どうぞよろしくお願いします!」


〇凡奈自宅

里香と電話をしている凡奈。

里香『なにそれ映画みたいな出会いじゃない。』
凡奈「出会いはいいんだけど、
  その後がサイテー…。
  私、つくづく自分が嫌になる…。」
里香『まあまあ、
  でも向こうからまた会おうって言ってくれたんでしょ?
  これはもしかしたらラブに発展するかもよ!?』
凡奈「そうだといいんだけど…
  でも、最高にみっともないところ見られたからなあ…。
  望み薄いかも…。」
  「大体、個人レッスンも、本当に誘われるかわからないし…」

と言いかけたところで、ラインが入ってくる。
柾から。
柾『来週の土曜日、あいていますか?
 お約束していたレッスンをさせていただきたいです。』

思わず飛び上がって体勢を変える凡奈。

凡奈「やばい、どうしよう、本当にお誘いメール来た!」
里香『うそうそ、やったじゃん!』
凡奈「え、服どうしよう、
  コスメとかも新しくしたほうがいいかな?」
里香『落ち着いて、ハナ!!
  明日一緒に買いに行こ!?』


場面転換・翌週土曜

〇凡奈のマンションの前

凡奈(久々にオシャレしてフルメイクした…
  どうしよう…緊張する…。)

そこへ、シルバーの高級外車が停まる。

柾「こんにちは、凡奈さん。
 お待たせしてしまいましたね。」
凡奈「い、いえ、全然待ってません!」

車の中でも落ち着かない凡奈。
他愛のない会話をしているが、そわそわしている。

凡奈(男性とでかけるのすら久しぶりだけど…
  こんなすてきな男性、
  ほんとにいるんだな…。)

〇高級マンションの一室

凡奈(す…すごいマンション…。)

柾「それじゃあ、始める前に、プレゼントです。」

小さな包みを渡す柾。
凡奈が開くと、それは華道の鋏。

柾「その鋏をパートナーにして、頑張ってくださいね。」
凡奈「ありがとうございます!」
柾「それじゃあ、鋏の持ち方から練習していきましょうね。」

凡奈(鋏の持ち方なんてあるんだ…。)

柾「上の方を親指ではさんで、
  下は重力で落ちるように…」
 「人差し指は鋏の間に入れないでくださいね。」
凡奈「こ…こうですか…?」
柾「…そこは、こう…」

後ろから包み込むように手を取る柾。
急な接近に、心臓が高鳴る凡奈。

凡奈(うわ、近い…!)

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