冬 -Domestic Violence-
――――――
「遅いっすよハルカさん。
どこ行ってたんすか?」
夕方になって落ち合い場所で先に待っていると、20分遅れでハルカさんがようやく来た。
「見つけた?」
「見つけてたらこんな悠長にコーヒー飲んでないっすよ。」
「・・だったら悠長にするな。」
「ハルカさんも空振りですか?」
「うん。」
「あぁ~~~見つからねぇなぁ・・。」
「とりあえず一旦署に戻ろ。」
「了解っす。」
“ブー!ブー!”
その時、ゴミ箱に空き缶を捨てたところでハルカさんのスマホが鳴った。
「はい、小泉です。
・・・・はい・・・・はい・・・
・・・・・・え・・?」
「・・・・?」
「・・・・・分かりました。
成田とも合流してるのですぐに戻ります。」
電話を切ったハルカさんが小首をかしげる。
もしかして・・・
「見つかったんですか!!?」
「ううん。中野じゃないんだけど、
不審者を一人捕まえたらしいから今事情聴取してるって。」
「不審者・・・?」
「3丁目にでっかい空き地あるでしょ?」
「はい。」
「あそこの生い茂った草むらの中を、
ブツブツと何か呟きながらほふく前進してた若い男がいたから、任意同行させたって。」
「事件と関係あるんすかね?」
「まだ分からないけど、オオスカワの街に不似合いな、かなりイカツイ男みたい。」
「まさか・・中野じゃなくてその男がシオリを!?」
「桜井課長の話だと、長さんが作ってくれた犯人の掌型にかなり近いって。」
「ハルカさんダッシュダッシュ!!
急ぎましょう!」
「・・・私に勝てると思ってるの?」
「!?」