間宮さんのニセ花嫁【完】
翌日、私は間宮家に借りている自室で一人茶道の稽古を行なっていた。明日が本番だというのに今日に限って梅子さんは茶道教室で一日中家にはいない。だからこうして一人で練習を行うしかないのだが。
「……うーん」
自分で点てたお茶を飲んでみる。美味しい、泡も綺麗に出来ているし口当たりもまろやかで梅子さんのお手本に遥かに近付いてはいるけど本当にこれで大丈夫なのか自信がない。
もし沢山練習してもこの間の仕事のように目の前が真っ暗になってしまったら? 昨日からその失敗ばかりを考えて不安で夜も眠れなかった。
「(もし失敗したら、間宮さんはこの家を継ぐことが出来なくなる)」
もしそうなったとしても彼は私を責めることはない。それを分かっているからこそ悔しいと思う。
それに紗枝さんと正志さんだって、上手くいかなくなるかもしれない。私に感謝してくれたあの二人の笑顔を無駄にしたくない。
もう一回初めから、新しいお茶碗に抹茶を入れる。すると扉の向こうから中にいる私に誰かが呼びかけて来た。
「飛鳥、いるか?」
「っ、は、はい!」
間宮さんの声だと顔を上げると静かに引き戸を開けて間宮さんが顔を出す。
珍しく着物に身を包んだ彼は部屋に入ってくるとそっと私の近くに腰を下ろした。
「悪いな、練習中邪魔をして」
「い、いえ! というか丁度詰まっていたところでして」
「何か心配なことが?」
「心配というか……」
間宮さんの穏やかな問い掛けにずっと胸に抑え込んでいた本音が漏れ出す。