間宮さんのニセ花嫁【完】
お昼休みになると私は手早くご飯を済ませてビルの屋上へと向かう。
屋上ではベンチに座って昼食を取っている人や、食後の運動でバドミントンをしている人たちがいた。
その間を掻き分けて進むと奥に柵に身体を預けながら外の景色を眺めている彼の姿があった。少しだけ強張った体を動かして私は彼の元へと足を進める。
「間宮さん」
「……わざわざ呼び出して悪いな」
「いえ……」
私の声に振り返った彼に気まずい空気を感じながらその隣に立って外を眺めた。ここからだと地面を歩く人たちの姿がアリのように小さく見える。
何と言って自分から話を切り出せばいいのか分からずいると、そんな気持ちを察してか彼が周りに誰もいないことを確認して先に口を開いた。
「ばあちゃんと話して、婚姻届は出さずに事実婚で進めることになったよ」
「本当ですか!?」
「あぁ、婚姻届も取り返そうと思ったんだが返してくれなくてな。そこだけはまだ安心出来ないけど何も報告なしに出すような人じゃないから」
良かったと胸を撫で下ろす私に彼は申し訳なさそうに眉を下げた。
「悪かった、この間はキツイ言い方をして」
「……いえ、私の方こそ考えが足りてませんでした。籍を入れない、それが最初の条件でした」
「だけど佐々本があそこまで思い切りがいいとは思わなかったよ」