間宮さんのニセ花嫁【完】
それは間宮さんのことが懸かっていたから。なんて恥ずかしいことも言えず軽く笑って誤魔化した。すると彼の指が不意に伸びてきて、私の乱れた前髪にそっと触れる。
「あまり、自分を安売りしないようにな。心配だから」
「っ……は、はい」
心配、してくれるんだ。そうだよね、上司だから。部下がもし危険な目にあったら心配するのは当たり前のことだ。
彼に触れられた前髪を押さえていると間宮さんは真剣な目つきで私を見下ろした。
「改めてもう一度考えてくれるか? この選択で佐々本は後悔しないのか」
「後悔、ですか」
「あぁ、それがどんな答えであれ、俺は受け止めるから」
間宮さんの表情を見て思った。この人はもう「決めている」んだと。
私がそれを受けようが断ろうが、彼が為すべき目的は変わらないのだから。
私も、ここまで来たのならば引き返すことはできない。だけど、
「(何か明確な理由がいる。彼と偽装結婚をする理由が)」
それがない限り、流されていると思われても仕方がない。
「……すみません、私はまだ」
「今すぐじゃなくていいよ。佐々本のタイミングでいい」
間宮さんのためにもなるべく早くその答えに辿り着きたい。私が彼との関係を続けようとする大きな理由はなんだろうか。
結婚を心配する両親を安心させる為? しつこく付きまとってくる聡から逃げる為の言い訳?
それ以外の何か。