間宮さんのニセ花嫁【完】
十時くらいまで飲むとお開きになり、弥生が同棲している彼氏に車で迎えに来てもらったので私は柳下くんにマンションまで送ってもらうことになった。
「家まで近いし、別に送ってくれなくても」
「佐々本さんに何かあったら後で松村さんに締められるんで」
「君、それが本音だな?」
バレましたか、と無邪気に笑う柳下くんは私の二個下の後輩だが、その甘いマスクと背の高さのギャップで歳上の女性社員から密かに人気がある。
聡と付き合っていた頃の私はそんなことすらも気にしたことがなく、今思えば自分の視界を自分で狭めていたのかもしれない。
「柳下くん彼女とかいないの?」
「お、気になりますー?」
「あれだけ私にズケズケと言っておいて自分が言わないのはどうかと」
「うーん、彼女はいないですかねー」
うわ、今彼女"は"って言った。聞かなかったことにしよう。
私も彼のようなラフな生き方をしたい。そう考えながら歩いているとあっという間にマンションまで付いてしまった。
「送ってくれてありがとう。ここまでで大丈夫だから」
「いえいえ、じゃあまた明日」
「うん、明日ね」
去って行く姿に手を振ると大きく手を振り返してくる柳下くんに母性のようなものが湧き上がる。駄目だ、二個下の男の子に母性を感じ始めたらそれこそ枯れ女一直線だ。