間宮さんのニセ花嫁【完】
その夜、仕事を終えると柳下くんが予約してくれたお洒落なバルへ訪れていた。最近出来たばかりという店内は平日のど真ん中にも関わらず満席で賑わっている。
「うちの部署って本当に誰も結婚しませんよね」
柳下くんはシーザーサラダを口に頬張りながら社内の既婚者を指折りで数えた。
「結婚に興味のない人が多いからじゃない?」
「もう直ぐ結婚するかも、って言ってた佐々本さんもこれですし」
「柳下くん、君はまだそのネタで私の心を抉る気なの?」
もう過去の自分が浅はかすぎて記憶から消してしまいたいぐらいだ。
しかし弥生は「だけど意外だな」とアヒージョにされたマッシュルームにフォークを刺した。
「もっと落ち込むと思ったんだけど。意外と前向きというか割り切っているというか」
「佐々本さんって本当に彼氏のこと好きだったんですか?」
「す、好きだったよ!」
「どういうところが?」
柳下くんの純朴な瞳に見つめられ、私は気まずそうに目を逸らす
。聡のどこが好きだったか。一緒にいて気を遣わなくて、笑いのセンスが似ていて、いつも私の考えを優先してくれた。
聡といると楽しかった。だけど浮気をされた今、楽しかった思い出が全部嘘だったのではないかと疑い始め、楽しい気持ちも何もかも消え失せた。
私は心が狭いんだろうか。一度くらいの間違いくらい許すべき?
あれから聡からの連絡は一度もない。
「おおっと! 佐々本選手ビール一杯煽ったー!」
「ちょっと飛鳥! また酔い潰れるのだけは勘弁してよね!」
私、今何もかもが中途半端だ。