間宮さんのニセ花嫁【完】
中途半端な気持ちのまま夕食の準備を手伝い、居間の片付けをしようと部屋に入ると夕食前にも関わらず間宮さんの姿があった。しかしその周りを見渡してももう一人の彼の存在はどこにもない。
「……百瀬くんは」
「帰ったよ」
「え!?」
「さっき荷物を持って出て行くところを見た」
そんな、明日の朝までは家にいると言っていたはずなのに。
特に気にしていないのか、淡々と話す間宮さんの視線は夕方のニュース番組に向けられていた。
ふとテーブルの上に視線を向けるとぞんざいに置かれた茶色の紙袋を見つける。
「あぁ、百瀬が帰る前に置いていった。鯛焼きらしいが」
「千景さんは食べないんですか?」
「……俺の分はいいよ」
最初から自分の分は買ってきていないだろうという考えが透けたような返事。私はそれが何だか悲しくなって溢れそうに涙を誤魔化すように笑うと紙袋の前に腰を下ろす。
「良かったら半分こしませんか? 夕食前なので」
「あ、あぁ、構わないけど」
「さっき百瀬くんにも貰ったんですけど凄く美味しかったんですよ!」
私に出来ることは少しでも間宮さんに明るい気持ちになってもらうことだ。そう思って紙袋の中から冷めた鯛焼きを一つ取り出してお腹のところで半分に割った