間宮さんのニセ花嫁【完】
弥生や柳下くんにも最近雰囲気が変わったと言ってもらうことも多く、きっと着物で過ごすことが増えたお陰で姿勢が良くなったり、桜さんの作る健康的な食事で体の栄養バランスが良くなったり。
とにかく大変な一年だったがその分自分に身に付いたものは大きく、自分を成長させてくれた時間となった。
年越し蕎麦も食べ終え、残すは年越しのタイミングを待つだけ。テレビの前で陣取る私に間宮さんは「気合が入っているな」と、
「やっぱりこの歳になってもイベントごとは気持ちが盛り上がってしまって」
「いや、普段は本家で慌ただしい間に年を越しているからこういうのは新鮮だ」
テレビで時間を確認するものなんだな、と何処と無くワクワクしているように見える彼。そうこうしているうちに年越しのカウントダウンが始まる。
お盆が終わってから今日までは本当に濃い半年だった。振り返っていたらきっとあっという間に年を越してしまうぐらいには。
だけどそのお陰で私は大事なことに気付けた。
「(結婚はゴールなんかじゃなくて……)」
一番大切なのは誰と一緒にいたいか、という気持ち。
そしてそれが、私の一番好きな人でありますように。
「3、2、1……」
ハッピーニューイヤーという言葉と共に盛り上がる会場がテレビに映し出される。
新年の挨拶をしようと間宮さんの方を振り向いて目を見開く。彼は私に向かって正座をしていた。
「飛鳥、去年は本当にありがとう」
「っ……」
「君がいなかったらこういう未来もなかったと思う。心の底から感謝しているよ」