間宮さんのニセ花嫁【完】
「駄目だ、一人は危ない。ここにいろ」
「千景さんはブレーカーを。百瀬くんが帰ってきても電気が使えないんじゃこの雨で風邪引いちゃいます」
「だけど百瀬だとは限らないだろう」
彼の考えも一理あるのは分かっている。しかし本当に百瀬くんだとしたら彼が危険な目に遭うのはどうしても避けたいのだ。
と、また一瞬辺りが光に包まれて激しい雷鳴が鳴り響いた。きゃあ!と声を上げてその場に座り込むと間宮さんが怖さを軽減するかのように自分の手で私の量耳を塞いだ。
そして、
「どうして言うことを聞いてくれないんだ」
耳元で呟かれた言葉にゆっくりと目を開く。
「そんなに百瀬のことが心配?」
「……え?」
顔を上げると目と鼻の先に彼の顔がある。暗闇の中でも彼の瞳が揺れているのが見えた。
あぁ、そんな不安な顔にさせたいわけじゃなかったのに。
「百瀬が好きか?」
そんな言葉、聞きたくなかったのに……
「……好きです」
「……そう」
「間宮さんが、好きです」