間宮さんのニセ花嫁【完】
まるで口から滑り落ちるように告げた言葉は、彼への呼び方が気にならないくらいに私の本音だった。
あんなに激しかった雨風の音が一瞬で止んだように廊下は静けさで包まれる。
「私、間宮さんのことが好きです」
「……」
「私が好きなのは、」
百瀬くんでもなくて、柳下くんでもない。他の誰でもなく。
「間宮さんです」
残酷なほどに優しい貴方。
伝えないと決めたはずだった気持ちが溢れ出てしまったのは、そうしてでも彼に自分のを勘違いして欲しくなかったから。
だけどそうすることによって彼を困らせることは変わらず、自分の情けなさに涙が込み上げてきた。
「(その顔もさせたくなかった)」
ううん、して欲しくなかった。私の告白に呆気に取られながらも気の利いた言葉を探す彼の姿は見ていられない。
「……玄関、見てきます」
そう言い残して立ち上がると私は逃げるようにして玄関へと向かう。今度は彼に引き止められることはなかった。
少しずつ壊れていく音が心の中に鳴っていた。