間宮さんのニセ花嫁【完】



「……か、飛鳥」

「っ……」


弥生の声で我に返った私は「なに?」と彼女に意識を向ける。すると彼女は話を聞いていなかった私に怪訝そうな表情を浮かべた。


「だから間宮さんが会社を辞める理由! 家を継ぐためって本当なのかな」

「あ、あぁ……」

「何その反応。飛鳥は間宮さんが辞めるの嫌じゃないの?」

「そ、そんなことないって。凄いお世話になったし!」


彼が会社を辞める理由は仕事初めの日から色々と憶測が飛んでいるのだが、彼が何処かで話したのか、「茶道の家元である家を継ぐため」というのがほとんどだった。


「まさか間宮さんの実家がそんな大きな家だったとは。結婚したら玉の輿だったんだね」

「おっ、もしかして乗りたかったんですか? 玉の輿」


急遽会話に入ってきた柳下くんに「だったら悪い?」と彼女は悪びれることなく言った。間宮さんの話、もうそこまで広まっているんだ。


「けどそういえば、最近佐々本さんもずっと茶道の本読んでましたよね」

「本当じゃん。もしかして何か関係があったりして」

「ないから、ないから!」


私が強く否定すると彼女たちも「それはないかー」と笑い飛ばす。二人は私が実は間宮さんと結婚してますって言っても最初は冗談でしか受け取ってくれないんだろうな。


「それにしても家を継ぐってことはやっぱり結婚するんですかね。名家ってことはお見合いとか」

「間宮さんと結婚するには生粋のお嬢様じゃないと駄目なのね」


二人が肩を落とす中、私は「資料室行ってくるね」とその場を後にした。

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