間宮さんのニセ花嫁【完】



「千景と先生が付き合ってたのは千景が17歳で高校二年の時。ああ見えて実は当時結構荒れてたんだよ、アイツ」

「そうなんですか!?」

「丁度千景と百瀬くん、どっちを後継者にするかで家も慌ただしかったから」


そんな間宮さんに担任として真摯に向き合った楓さんは彼の相談に乗るうちに恋仲になっていったと言う。


「多分二人が付き合ってること知ってるの、私たち二人だけだったと思う。私たちは応援していたし、二人の恋を見守っていたけど」


紗枝さんが言うには二年の冬、とある生徒が二人が手を繋いで街を歩いているのを見かけ、学校で大問題になったらしい。
間宮さんは停学処分という形で収まったのだが、


「先生は学校を辞めることになったんだ。そしてこの街からも追い出された」

「そんな……どうして」

「これは後から千景に聞いた話だけど、どうやら梅子さんが関わっているらしい」


間宮さんが楓さんと付き合っているということが知れた時、梅子さんが彼女に街を出て行くように言い従えたと正志さんは言った。
もし次期当主となる息子が学校で女教師と問題を起こしていたとすると周りから向けられる目が厳しくなるのは目に見えていた。

しかしそれは二人にとってあまりにも残酷な別れであり、


「結局先生は教師を辞めたみたいだ。千景はそれをずっと自分のせいだと後悔しているみたいだけど」

「……間宮さんは自分が彼女を傷付けたと言っていました。そのことについて何か知っていますか?」

「傷付けた? 先生を辞めさせたことじゃなくて?」

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