間宮さんのニセ花嫁【完】
そろそろ戻ろうと立ち上がるとコートのポケットに入れていたスマホが震える。
「お母さん?」
母からの通話に出るとスマホ越しに彼女の慌てた声が届いた。
《もしもし? 飛鳥? 今どこにいるの?》
「ご、ごめん。今から帰るよ」
《それがさっき、間宮くんが……》
間宮さん?
「飛鳥……!」
「っ……」
母の声よりもクリアに聞こえた声に私は咄嗟にスマホを耳から外して周りを見渡す。
まさか、そんな期待を抱きながら暗闇の中目を凝らしてその声の持ち主を探した。
そして、
「飛鳥!」
スマホの明かりを目印にするようにこちらに向かって走ってくる男性に私は「あ!」と声を上げる。
「ま、みやさん!」
彼の姿を見つけた瞬間、私も走り出していた。
心に秘めていた「会いたい」という気持ちが彼を見た瞬間に止めどなく溢れ出す。