間宮さんのニセ花嫁【完】
「うっ、……」
そんなの、理由は簡単だ。
『佐々本ならこの先、もっといい男と出会えるさ』
私が聡と別れて凹んでいた時、彼が言ってくれた言葉。あの時はその台詞に元気付けられたけれど今は違う。
間宮さん以上の人なんていない。
「そっか、私……」
溢れる涙を抑えながら、震える唇で呟く。
私、間宮さんのことが好きだった。本気で、好きだった。
次の恋なんて考えられないくらいに、間宮さんのことが好きだった。
一生に一度、人生で一番好きだって思えた人だった。
そんな人を、私は自分から手放してしまった。
「(間宮さんの後悔を消すつもりが、私が一番後悔してる……)」
私の恋は間宮さんの幸せの犠牲になったのだ。それが誇らしく思いつつも、何故だか今は凄く悲しいことのように思える。
馬鹿だな、私。偽装結婚なんてしなければこんな辛い思いしなくて済んだのに。だけど、それじゃあ間宮さんのことを好きになることもなかったのかも。
海岸沿いで一人泣いている自分が何だか酷く滑稽に思えた。頰に流れた涙が潮風に紛れて飛んでいけばいいのにと願うのに、溢れるそれは止まるところを知らない。
いつかこの恋が過去と呼べるようになるまで、それまでは好きでいることを許してくれるかな。
キーホルダーをギュッと胸に抱き、そして静かに目蓋を開く。