間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんが会社を辞め、心置きなく身に付けることが出来た指輪。それに言及された時に思わず「新しい恋人が出来てその人からもらった」と二人に告げていたことを思い出した。
家を継ぐために会社を辞めた間宮さん、それから指輪をつけ始めた私、そして彼の薬指にも似たような指輪が嵌められている。
ここから導かれる答えは、
「わ、私間宮さんを下まで見送ってきますね!」
「え、まだ来たばっかり」
「ほら! 行きましょ行きましょ!」
無理矢理彼の背中を押して部署を後にする。このままここにいたら芋蔓式に私たちのことが晒されてしまう。
ズンズンとエレベーターホールへと向かっていると後ろから「飛鳥」と名前を呼ぶ声が耳に届いた。
「ちゃんと説明しなくて大丈夫か?」
「わ、私が後でしておきます。間宮さんの口からだとやはり衝撃が凄そうなので」
帰った後が心配だなと肩を落とす。間宮さんはそんな私を見てクスリと喉を鳴らした。
「え、今笑いました?」
「あ、いや……悪い……」
「元はといえば間宮さんが黙って会社に来るから」
「名前、苗字じゃなくてもいいんじゃないか?」
「……」
この人全然反省してないな。顔を見上げるとまた彼が呆れている私を見て笑っていたので膨れたように足を進める。