間宮さんのニセ花嫁【完】



「……」

「どうかしたか?」

「いえ、千景さんが可愛くて、言葉が出てこなかっただけです」


素直にそう伝えると「流石に可愛いは」と照れさせてしまった様子。しかしそんなところもまた可愛いのだ。
すると間宮さんは私の腰を引き寄せると首元に顔を埋めた。


「ち、ちちち、千景さん!?」

「甘い匂いがする」

「え、なんでだろ。お風呂入ったんですけど」

「チョコの匂い、染み付いてるのかもな」


首元で話されるとくすぐったいような。手を伸ばし彼の揉み上げをなぞると彼が顔を上げた。

すると、


「女の子に、こういうことを言うのはどうかと思うんだが……君のことを抱きたくて仕方がない」

「えっ……」

「だから……金曜日の夜いいだろうか」


切羽詰まったような声に暫くして言われた言葉の意味を理解した。
どう返事をしたらいいか戸惑っていると彼は私がゆっくりと話せるようになるまで静かに目を見つめていた。

そういえば最近、間宮さんとそういうことしてなかった。彼の実家ということもあってそういう空気になってもお互いに踏ん切りが付かなかったのだ。
間宮さんも一人の男の人なんだ。普段欲を見せない彼が直接私に気持ちを伝えてくれることの重大さをしかと受け止める。



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