間宮さんのニセ花嫁【完】




間宮さんが出張で京都に旅立ったバレンタインデー前日。会社から帰ってきた私に待っていたのは本番用のバレンタインチョコを作る作業だった。

夜十一時、時間を掛けて完成したチョコレートを前にやり切ったと言わんばかりにガッツポーズを掲げる。


「今までで1番の出来! 特訓し続けた甲斐があった〜」


これならきっと間宮さんも喜んでくれるはずだ。深夜の台所で京都にいるだろう間宮さんさんに思いを馳せる。
紗枝さんから頂いた和紙を使ってラッピングも終えるとチョコを冷蔵庫に入れ、居間のコタツで一息つく。

間宮さん、今はもう寝てるよね。家にいないのは寂しいけど、明日になれば沢山会える。


『君のことを抱きたくて仕方がない』


思えば少し遅めの恋愛だったかもしれない。20代後半で、恋愛は若いうちというイメージがあった私にとって間宮さんの存在は不思議なものだった。
今までだって仕事の関係で直ぐ側にいたのにどうして彼のことを好きになってなかったんだろう。深くを知れば、彼以上に素敵な男性なんてこの世にいないと分かったのに。

私は最初から「彼が私なんかを好きになるはずがない」という前提で接していたから、そんなこと考えもしなかったのだ。
今、直接目を見て気持ちを伝えてくれる彼のことが愛おしくて堪らない。



頰を撫でる冷たい空気で目が覚めた。


「ん……」


ボヤけた視界で辺りを確認するとそこが事実でないことに気付く。記憶を辿り寄せるとどうやら部屋には帰らず今のコタツでそのまま眠ってしまっていたらしい。
寒さにぶるりと体が震え、コタツから出ると顔を洗うために廊下に向かう。

すると、



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