間宮さんのニセ花嫁【完】



ブーブーと唇を尖らせて文句を言う柳下くんと素直にチョコレートを受け取ってくれる結城くん。
柳下くんはこのあと他の女性社員からもチョコレートを大量にもらうだろうに、贅沢な男だ。


「で、間宮さんへのチョコは上手くいったんですか?」

「え゛、何故それを」

「あんな仕事場でレシピずっと読んでれたら分かりますよ」

「い、一応作れた、けど……」


そういえば今日会う約束をしているけどチョコレート大きくて持って来れなかったんだよな。渡せるのはもしかしたら明日になるかもしれない。
だけど今日は、チョコレートの代わりに私自身を……


「(なんて! なんて恥ずかしいことを今!)」

「(どうせロクでもないこと考えてるな)」


美味しそうにチョコレートを頬張る結城くんを置いて「松村さんからももらいにいこー」と去っていった柳下くん。
結局弥生は柳下くんに個別でチョコレートを準備しているんだろうか。

やはり今年もバレンタインデーの社内は騒々しく、そして少しほろ苦い。





その知らせが届いたのは定時を過ぎ、帰るために荷物をまとめていた時だった。
この時間に彼からの連絡が来るのはあまりいい知らせではないだろうなと思いつつもその電話に応じる。


「もしもし」

《飛鳥か? まだ会社にいるか?》

「はい、今から向かおうかと」



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