間宮さんのニセ花嫁【完】
間宮さんからのメッセージを伝えると桜さんが一安心と息を吐く。私も間宮さんが帰ってこられることに安堵していた。
夕食後、お風呂をいただいた私は梅子さんが部屋に戻るのを見送ると一人居間に残ってテレビを見ていた。
「飛鳥さん、まだ寝ないの?」
「えっと、千景さん帰ってくるの待ってようかなって」
「そう? じゃあよろしくね」
時間はもう夜の11時を超えていた。間宮さんが帰ってくる頃には日を跨いでしまうだろう。
それでも彼が帰ってくるのを待っていると言ったからにはここで寝るわけにはいかない。
それに、
「(チョコレート、日が変わったとしても渡したい……)」
この日まで様々な努力を重ねた。それは間宮さんのためだけじゃなくて、間宮さんと一緒にいる上で自分にできる最大限の気持ちを伝え方だと思ったからだ。
これから私たちの関係はどう変わっていくんだろう。ずっとこのまま、曖昧な関係が続いて行くんだろうか。いつか言葉にして伝えたいと思っていたことが、彼本人に伝わる日が来るんだろうか。
その日が今日だったら、
「……間宮さん」
ふと懐かしい呼び名を口にすると自分の中ではまだ、彼が上司だった頃の思い出が色濃く残っていることに気付く。
彼との出会いは決して恋愛に発展するものじゃなかった。だからこそ、彼のいいところも悪いところも見えた。それを丸ごと愛おしく思えたのも。